IROSHIMA 2008
Animations座談会8 < 1 2 3 4 >
日目 & 日目


24 Minuscule - The Ladybug (Thomas Szabo)

山村
てんとう虫はちょっとしゃべりましょうか。賞も取ってるし。

土居
なんでこれ、賞とってるんですか。

グェン
ちょっと無視するわけにいかない。

土居
お、シャレですね!

グェン
いやいや…全体の受賞作のバランスについては後で話すかもしれませんが、でもこれは分からないですね。こんなものが賞取るとは。テレビ用シリーズの一話なんですが。

土居
出来自体も全然良くなかったですよね。

大山
最初の1分くらいは期待したんだけど。(ナザーロフの)『アリの冒険』みたいになるのかなと思って。

土居
正反対ですよね。

グェン
へたなギャグなんか入れて。観客の一番どうでもいいところしかくすぐらない。ちょっと困るんだよね。

土居
作家の人が「自然のなかで過ごすのが好き」って言ってたんですけど、それでこういう作品ができるのはやっぱりおかしいですよ。

山村
受賞は理解できないですね。

グェン
もっと言えば、コンペに入っていること自体がおかしい。

山村
まとまりが良かったからでしょうね。あと、最初の引き込みが良かったので、コンペには入りやすい。ファースト・インプレッションが強い方が入選しやすい。


25 John and Karen (Matthew Walker)


土居
前回は『アストロノーツ』でコンペに入ってます。宇宙飛行士のやつ。

大山
えー、この人なの!?

土居
あの作品も、間の取り方はうまかったですよ。

グェン
そうですね。なかなかですね。これは優秀賞以上取ってもよかったと思ったんですが。イギリス的な笑いですね。

山村
そうですね。でも、僕は、共感はしないんだよね。うまさとかの魅力は認めるにしても。笑いの部分での共感はない。そこまで評価するのはわからない。ありふれてるし。逆に教えてほしい。

グェン
キャラクター演技…演技と内容を微妙にずらしつつ…

山村
細かいところがちゃんとしているんですよね。

土居
うるさくなりすぎないくらいにディテールを入れこんでいたと思います。

グェン
細かい精神的な動きが伝わってくるなと。動物のキャラクターを使いながらも。

山村
そういうところは良く出来てるよね。

大山
どこかで見たような設定ではありますよね。大きなサイズの小心者と、小さいけれど強気のキャラクター。

山村
目新しさという点ではピンとこなかった。クオリティが高いのはわかるんだけど。僕もいろんなところで観ているんだけど、たくさん賞を取っていて。いつも納得しきれないままにいるところがある。

グェン
前の作品(『ミナスキュル』)と比べたら断然良いと思いますよ。

山村
てんとう虫のやつと比べたらね。


27 The Heart is a Metronome (Jean Charles Mbotti Malolo)


山村
これは僕、評価高いんですよ結構。

土居 
これ、僕、最初見たときに、わかんなかった。これまで見たことない感じの作品だったっていうのもあって、「やりすぎじゃない?」ってなんだかちょっとイラッとしちゃったんですよ。でも後からよく考えてみたら、新しい可能性あるかもって思いはじめました。

グェン
これも学生の作品ですよね。

土居
学生作品で、デビュー賞獲りましたね。

山村
これほんとに、観たとたんすごく感心しました。なんと言えばいいんだろう。語るべきことと語るべき方法と、若いのに両方備えていてちょっとビックリしたんですよね。今回は賞も獲っているので十分な評価だと思うんですけど。

土居
この人は学校どこなんですか。

グェン
リヨンです。はっきりしない方針の学校です。個人制作で作っていて、卒業後、商業に走る人もいれば、作家を目指す人もいるっていう。

山村
この人、どっちにいっても良いような気がしますね。商業的な方でも良い演出家になると思うし、作家としても可能性は見えるし。今回の一番の発見というか…心強かったです。

グェン
そうですね。

土居
この人、何系の人なんですかね。

グェン
いやー、ちょっとそこまでわからないですけど…

山村
作家自身も黒人系なんですよね。

グェン
最後に写真が出てましたね。

土居
黒人でアニメーション作ってる人ってあまりいないですよね。

山村
あ、そういう点でも新鮮。

土居
リズムが黒人っぽくて。

山村
そうなんだよね。リズム違ってたよね。そこがすごいゾクゾクッときた。

土居
僕はそれで戸惑ってしまって見方を失敗しました。

大山
そうかあ、ちょっと、もう一回観たいですねえ…。最初の方は面白いと思ってたんですけど、途中からだんだんクドくなってきたっていうか。


28 Zhiharka (Oleg Uzhinov)


土居
『ジハルカ』はピロット・スタジオの「宝の山」シリーズの中では全然悪くない、むしろ良いと思ったんですけど。

山村
今回ねえ、このシリーズのセレクションに関しては、ちょっとあまりに政治的にというか。

土居
駄目ですよこんな事しちゃ。

山村
ここまでしちゃうとまずいよね。やっぱ顰蹙買うよね(笑)。

グェン
オープニングのところから国策プンプンだし、ちょっと苦しいよね。

土居
ペトロフが「このシリーズは注目すべきだよ」って言ってた時からこれは危ないなって。

山村
(笑)それはそんなに深い意味で言ったんじゃないかもしれないからね。確かに質が高いものが集まってるシリーズだとは思いますよ。

グェン
悪くない方だといっても、これもね、何が良いのかちょっとねえ。これも子供向けとして作られたんだろうけど、内容としても表現としても何がそんなに特別に優れているのかわからないんですよね。

山村
このシリーズ全部そうだけど、やっぱりTVのためのものという印象しかないですよね。

イラン
そういう枠の中であれば確かに出来として良いのもありますけど。

山村 
その中での競争ならわかるけど、こういったカテゴリーのないコンペティションに入ってくると、異質だよね…。別に普通に楽しめるんだけどね。テンポよく語ってるんで。でもそれだけの事で…

イラン
単純にどうでもいいというか、観ても観なくてもいいようなものですよね。


30 Mother and Music (Julia Aronova)


山村
これについては土居君がしゃべりたいよね。

土居 
でももうウェブで書きましたからね。

山村 
書いたからいい?

土居 
逆に他の皆さんがどう思ってるのか知りたいです。

大山 
これも前半「あー面白い!」って思ったんだけどだんだん飽きてきちゃったんだよなあ…

土居 
ちょっと長いっていうのはあると思うんですけど、僕、ロシア文学関係の知識がある方だと思うんで、そうでない人と見え方が全然違うと思うんですよね。この女の子が将来詩人になる子――しかも有名なマリーナ・ツヴェターエワなんだって知ってるか知ってないかで。

山村 
なるほどね。

土居 
この作品が描いている女の子の主観的な世界は、将来、詩人になる女の子の一人ぼっちの世界。孤独だけど、でも、空想のなかで、それはそれで楽しめてる世界。そういう表現として、僕は抜群だと思いました。ノルシュテインっぽくはあると思うんですけど、ちゃんと消化してる感じがして。

グェン 
子供の世界をちゃんと描いている。これが何の賞も獲ってないのはおかしいよね。

山村 
僕もそう思います。

土居 
しゃべってたら(作品を思い出して)鳥肌が立ってしまった…。

山村 
これは、今回の中でもかなり群を抜いた質を持ってると思います。

土居 
僕は以前ラピュタで一度観てるんですけど、その時は画質が悪くて、汚い色にみえちゃって。その前の作品(『A Beetle, A Boat, An Apricot』)が本当に好きで――前回の広島の「ベスト・オブ・ザ・ワールド」と「子どものためのアニメーション」で二回観たんですけど――もう、本当に好きで期待していたので、ちょっとガッカリしたんですけど、今回、ちゃんとした画質で観たら素晴らしかった。

山村 
素晴らしい画を作ってたし、本当に感心する。でも、もしかしたら審査会で、やっぱりノルシュテインに似すぎているっていう部分で、賞を逃したのではないかなって想像してしまうんですね。こういうことは必ずあるんですよ。大作家に似たものは賞から外すっていう議論になりがち。自分にもそういうところがあるんで、それはすごく反省しなきゃならないなって思う。

土居 
確かに、ロシアで切り絵やっている人って、ノルシュテインの模倣みたいなスタイルを使っている人が多くて、そこらへんの判断は難しいですよね。

山村 
僕もそこで評価を落としがちなんだけど、でも、それは一つのスクールとして――例えばザグレブスクールがあったりだとか――一つの型になりつつある部分もあると思うので、それだけでマイナスポイントにするべきではない。一つの型の中で良い作品を作ってたら、やっぱりそれはそれで評価しないといけないと思う。

グェン 
多くの場合は、「似すぎている」っていうところ以前の問題で、作品になってなかったりするんだけど…

山村 
これはもう十分なっているわけで、そこは差し引いた上で比較しなければいけないんだけど。どうしても歴史の浅いアニメーションの中の評価って事になると、まず前例のないものっていうところで高い評価になっていく。これはちょっと評論家や評価する側は気をつけなければいけないところ。シネカリやったら、スタイルが似てなくても、もうマクラレンって言っちゃうような。「スタイル」っていうものの見方もものすごく浅かったりすることもあったりして。切り紙だからノルシュテイン、雪が降ってたらノルシュテイン…ってあまりに浅いレベルで似てる部分を指摘する場合もあるんですよ。そこは評価する側はきちんと乗り越えてやらなきゃいけないんだろうなっていうのは思います。賞を獲らなかったのはそのせいだったんじゃないかっていう、これは単に想像ですが。

土居 
この日のコンペが終わった後に観客の人が「あれ、ノルシュテインだよね」みたいなこと言ってて、かなりプチーンときました。

グェン 
一言で片付けられちゃうっていうのが怖いんですよね。

山村 
「似てるね、パクリだね」って言っちゃうとそこで思考が停止してしまいますからね。

大山 
第一印象ではそんなにノルシュテインそっくりだなっていう印象持たなかったんですけど。

山村 
いくつかのカットで『話の話』とほぼ同じアングルのカット割があったっていうところで、もちろん言われても仕方がない部分はあるけどね。

土居 
演技のつけ方とか、細かいところでもだいぶ。この人、どこで勉強したのかっていうのが知りたいんですけど、全然連絡くれないんですよね。プロデューサーに名刺渡して連絡もらう約束したんですけどねえ…でも、ロシアはこういうちゃんと作家してる人がポツポツいるのが…

山村 
ほんと、すごいと思いますよ。底知れない。


32 The Old, Old, Very Old Man (Elizabeth Hobbs)


土居 
僕はこの作家自体が好きなので。

山村 
顔じゃなくて?

土居 
ちがいますよ(笑)。最近では珍しい動かし方する人だと思います。ちゃんとアニメートするんじゃなくて、止めと止めの間を埋めさせるようなやり方で成立させてるっていうのがいいなと思うんですよね。

山村
そうなんだよね。中割じゃなくて一枚一枚がちゃんと絵になってるんだよね。

土居 
題材の選択に関しては、「これでいいのか」って思っちゃうんですけど。

山村 
絵の魅力はあるよね。


35 The Little Mouse and the Fox (Olga Chernova)

山村 
これは土居君が「覚えてない」って書いてたやつだよね。僕は覚えてるな。

大山 
僕はわりと好きでしたよ。絵が綺麗だなあって。

グェン 
絵本の感じで。だけど、結局何を…

大山 
まあねえ…

山村 
いかにも絵本をアニメーションにしましたっていうね。

グェン 
そうするとストーリーとしての着地点を期待してしまうんだよね。

土居 
こういう絵本とかを選んだ場合、どうすると素晴らしい作品になるんですか。

山村 
それはやっぱりアニメーションにする必然性が確実にないとするべきじゃないと思う。もちろん商業的な理由でそれをテレビシリーズにのっけるとかいう理由で作る場合はありますけど。

グェン 
これは違うよね。

山村 
作品にする場合は、その必然性がなかったらだめでしょう。絵本で既に確立している世界を、なんで映像に変えるのかっていう明確なものがない限り、安易に手を出すべきじゃないと思いますね。

グェン 
ちょっと残念でしたね、これは。

大山 
これは本当に絵本が原作なんですか?

グェン 
いや、これはあえてそういう描き方でやっているので、何か物語的なものを期待するんだけど、それがないじゃないですか。ただ対立するものを描いているだけで。だから文句を言いたくなってしまうんですよね。


38 The Bridge (Vincent Bierrewaerts)


山村 
これも残念な作品でしたね。

土居 
それはどういう意味でですか。

山村 
前半は「もしかして何かあるのかな」と期待させてくれたんだけど、街に下りてからというのが何も起こらなかった。

グェン 
そうね、お父さんの死のあたりからちょっと笑ってしまうんだよね。

山村 
この日の中では良い方だと思うんだけどね。残念ながらストーリーが未消化というか。

土居 
花火の表現とかどうやってるんだろうと思ったんですけど。

山村 
CGじゃないの?

土居 
クレイでやってるって言ってました。CGかなあと思ったんですけど、完全にアナログにこだわってるって。


40 A Little Farther (François-Marc Baillet)

土居 
これ賞獲ってるんですよね。

山村 
わかんないねえ。

グェン 
ルネ・ラルー賞ですね。もともとわけわかんない賞ですね。

土居 
前回も変なのが獲ってましたよね。赤ちゃんを作るやつ。

グェン 
悪いとは思わないけどね。学生の作品として、うまくまとめていて。

山村 
まとまりは良かったですよね。

グェン 
だからと言って大した幅があるわけじゃないし。

土居 
大山さん、食物連鎖系が流行ってるって言ってませんでしたっけ?

大山 
流行ってるっていうか昔からあるんじゃない。

山村 
前も日本人で多摩美の学生が作ってたよね。タイトル忘れちゃったけど。

グェン 
ああ、そうでしたね。

山村 
まあ、誰でも思いつくというか考え付いてしまう、アニメーションによくあるアイデアですよね。


48 Foolish Girl (Zojya Kireeva)


山村
これは僕はどうでもいいんだけど、どうでもいいというか、どうぞ。(一同笑)

土居
すごくしゃべりにくいんですけど(笑)。

山村
いや、語りたい人がまず語らないと。

土居
僕もレビュー書いちゃいましたからね。

グェン
かなり絶賛してましたね。「ラストは失敗している」と言っている以外は。いや、これもさっきの『マザー・アンド・ミュージック』と共通しているのは、子どもの細かいところをうまく描けてる。この作品では、かわいらしくないところこそちゃんと描写している。表情とか。


49 Oktapodi (Julien Bocabeille, François Xavier Chanioux, Olivier Delabarre, Thierry Marchand, Quentin Marmier, Emud Mokhberi)

土居 
これも賞を獲ってますね。

グェン 
国際審査委員特別賞。

山村 
これ、国際審査委員特別賞じゃないでしょー。

グェン 
優秀賞ならまだわかるんだけどね。

山村 
意外なほど変なCGが賞を獲ってるんだよね。これは今回の選考委員の並びの中でいったい誰が評価したのかっていうのが僕は見えないんですけど。学生映画祭だったらね、何かしら賞は獲るかもしれないけど。就職のプレゼンテーションとしては良いんでしょうけど。

土居 
この学校はみんなこういう商業系なんですか。

グェン 
完全にそうです。ゴブランの卒業制作は、殆どみんなこのパターンです。ドタバタドタバタの追っかけ。それだけですよ。とにかく「エンターテインメントの王道」を走っていて、これがその流れの一つの代表作にはなるでしょうけどね。


53 Weiss (Florian Grolig)


大山 
『ワイス』は和田君が良いって言ってたよね。

山村 
悪くないと思いますよ。アニメーションの基本ができてる。シンプルな設定と状況の中でアイデアを重ねていくっていう。学生がこういった制限のなかで作品を組み立てていくことをやったっていうのは、非常にいいと思います。

グェン 
土居君が「せっかくアニメーションを観ているので、身体も含めて丸ごと喜ばせてほしい」ってレビューで書いているんだけど、この場合は、登場人物の制限された感覚を、見る側も束縛されながら観るということに意味があるように思いますけれども。

土居 
というか、その、閉じ込められてるっていう感覚が来なかったっていうことなんですよね。空間がこんなふうになっているんだ、っていう意外性を僕はあんまり感じませんでした。最初からわかりきった空間じゃん、って。

山村 
僕は結構閉塞感が出てたと思うけどね。何もないのに圧迫感が出てるっていうのはなかなか。まあ、それは受け取る側の感覚なので。 3 >


Animations座談会8 HIROSHIMA 2008 < 1 2 3 4 >