ロック国際アニメーション映画祭2008 レポート
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日目(2008.9.26)


風邪がひどい。念のため、と持ってきた薬がなくなりそうだ。朝から晩まで、フェスティバルの流れにまともに付き合っていると休む暇がない。密閉空間だし、風邪は結構流行してるみたいだ。

昨日の朝から、船内に「カーニバル」と書かれたポスターが貼ってあり、今日はあらゆるところに風船が付けられている。予定を変更して、今日がカーニバルらしい。カーニバルってなんだよ。

・コンペ5(カテゴリ3)
コンペもついに最後のカテゴリ、卒業後初制作の作品。永遠に続くお祭りのように思えたこのフェスティバルも後半戦にさしかかってきたということか……
"The Street Cleaner on the Moon"(Konstantin Golubkov)は広島のときはボケボケの画面だったがゆえに意識が遠のいてしまったのだが今回ちゃんと観たら結構グレイトな作品だった。主人公と周りの世界との距離の取り方・関わり具合の描写が秀逸。ロングショットで撮影すると内面は身体の動きで示すしかなく、それを理解したうえで、表現力豊かな動きを作っている。自分の空想の世界にヤギと一緒に生きる男の話(ヤギはヤギで自分の世界を生きている)。街中で革命が起ころうが彼にとっては関係の話であって……
上映中に眠りに落ちる頻度が高くなってきた。

・KROK's Presentation
メキシコの画家でソ連とも深く関わっていたディエゴ・リベラのドキュメンタリー・アニメーションやいくつかの長編のパイロット版が紹介された。ドキュメンタリーは字幕出まくりだったのでさすがに画面下部を諦めてしまうことはできず、一番後方で立ちながら観る。40分あったので疲れた……長編パイロット版についていえば、「ほんとにこれで長編作るの!?」という感想しか……
停泊地のゴリッツィへの到着が遅れ、プログラムが前倒し。「5分後に次の上映はじめます」だって。休みをくれ……

・テレギン回顧上映
今回は審査員の一人、ヴァレンティン・テレギンの回顧上映。ロシアのさまざまなスタジオを渡り歩き、最近はずっとピロットで監督業などをしている方。ほとんどの作品が共同監督だったが、どれもなかなか印象深かった。"About Matvey Kuzmich"は物語をさっぱり理解できなかったのだけれども、動物や人間たちのどろどろした粘土感が気持ちよかった。『パニック・イン・ザ・ヴィレッジ』やハイドメッツ監督でパルンが脚本書いていた『キリン』を少々思わせる。そんなライン。"THe Lime-tree bear"は、影絵調アニメーションなのだけれども、それを平面ではなく立体空間のなかで動かしているのが興味深かった。キャラクターもその影も両方同じような黒い切り絵なのだが、その大きさによって観客は一方が影だときちんと理解できる。不思議な空間の描き方をするなあ、という印象。物語はよくわかりませんでしたがね。"The Redgate Rashomon"は二次戦直後のモスクワを舞台とした三部構成の作品で、ロシア人と日本人(クロサワアキラという名前だった)のスケート競争、その氷の下のポーカー、後日談とエピソードは続く。油絵調(描画はパソコン上だと思われる)のドローイング・アニメーションで、動きの質感が非常にコヴァリョフっぽい、というかピロットのある種の一派がああいう動きを好んだのか? 最後に新作長編のパイロット版。昨年亡くなったピロット・スタジオの創始者タタルスキーが長年温めていた企画だったらしく、もう完成することはないらしい。これはコヴァリョフ調のキャラクターデザイン。彼が関わっていたのか、それとも。

・ゴリッツィ
ロシア人もよく知らないらしいこの場所は、16世紀に建てられた非常に古い修道院が見所らしい。港のそばには牛がいたりする。ハングルがあしらわれた色とりどりのバスが並んでいる。韓国人(北朝鮮かもしんないけど)に人気のスポットなのだろうか。

鮮やかバス

バスから変な銅像が立っているのがみえる。どうみても、エルヴィスみたいなシャツを着てボウリングをしている人にしか見えない。この街に似合わない。ここ出身で世界的に有名なプロボーラーを讃えるために建てられたにちがいない、という結論に他のみんなは達したようだ。

おっかあ、オラいつか村一番のボーラーになるだ!

今写真を見返してみると、兵隊ですね。不謹慎でした。

出発の時間なのにバスに山村さんの姿が見当たらなかったので、セレブ待遇なのかと思ったら、息を切らして飛び込んできた。

息も絶え絶え

ゴリッツィには特に何も期待していなかったのだが、キリロ・ベロセリスキー修道院がものすごく良い場所だった。でかい。きれい。またしてもオスロさんが子犬のように走り回って写真を撮りまくっていた。ここでたくさんイコン画をみて圧倒される。こういう重みを持ったアニメーションっていうものも観てみたいけど……映画にはたくさんあるけどなあ。

写真を撮るオスロさん

歴史を感じる

ほんとご立派な建物ばかりで

小さな門の向こうに、太陽が輝く湖が見えてくる。暗くて小さな通路を抜けて、とてつもなく大きなものが目に入ってくる『話の話』のあのシーンを思わず思い出してしまうような。傍らで野良犬が湖の水を飲みにきているのもなんだかいとおしい。あらゆるものが輝いてみえるよ。涙。

狭い通路を抜けていくと

大きな湖が広がっている

水を飲みにきた野良犬

・コンペ6(カテゴリ3)
"Four"(Ivana Sebestova)はラギオニの絵でパルン『草上の朝食』をやってみたような作品。興味深くはあったけれども、構成に無理矢理感があって観ててちょっとつらい。
作品のレビューが少ないのは寝てたからってわけではないですよ。

・ピロット20周年特集上映
ロシア初の非国営アニメーションスタジオであり、今でもおそらくロシア一の影響力を持っているピロット・スタジオの20周年記念回顧上映プログラム。昨年亡くなった創始者のタタルスキーに捧げられたプログラム。彼のドキュメンタリー"Alexander Tatarskiy, or how to embrace the immense"(Natalia Lukintykh)。当然のことながら、イゴール・コヴァリョフが出ずっぱり。動くコヴァリョフをちゃんと観るのは初めてのこと。思っていたより細い。声が高い。目が本気で少し怖い。1971年にウクライナで知り合ったタタルスキーとコヴァリョフは、お互いをシャム双生児であるかのごとく親しく思い、まるで恋に落ちたかのごとく、ほとんどすべての日を一緒に過ごしていたらしい。しかし、ピロット・スタジオ創設時には既に双子のようではなくなり、タタルスキーはすべてをコメディーに、コヴァリョフはその正反対に容易には理解しがたいような(多くの人の目にはそのように映った)作品を作る方向へと進んでいく。(まあ、違う方向に進むことで補完しあっていたとも言える……)先ほどのプログラムでも観た、タタルスキーが構想していた長編についても少し。ロンドンを舞台にしたワニの探偵の物語で、タタルスキーは10年間脚本を書き続けていたわけだが、しかしその死によって永遠に完成しないことになってしまった。「宝の山」シリーズはタタルスキーのリアルな愛国主義の心から生まれた企画であり、しかしその愛国主義とは、ロシアだけではなく、すべての国に価値があることを主張するものへと拡張されていく予定だった、という話も。
タタルスキーは永遠に子どもでいつづけることに執着を持っており、あらゆる人に子どもの部分はあるのだ、と語る。それってウォルト・ディズニーが言ってたことそのままだよな、とも思うのだが(実際彼は「ディズニーランド」ならぬ「タタルランド」を建設したがっていた)、タタルスキーの語りぶりからは彼が心の底からそのように思っていたことが伝わってきて、空恐ろしい気持ちに。アニメーションと子ども……
このドキュメンタリーでもう一つ印象に残ったのは、コヴァリョフの身振り。彼の過剰かつ抑制も効いた振る舞いから受ける印象は、彼のアニメーション作品から受けるものと同じだった。某動画サイトには『フライング・ナンセン』のメイキングがアップされていて、アニメーターにシーンの説明をするコヴァリョフの姿が映っている。そこでの彼の演技はナンセンの動きそのまんま。これもまた怖いんだよなあ。アニメーションとはダンスなんだ、とマクラレンは言っていたが。俺はさらに『白雪姫』の全シーンをアニメーターたちの前で演じてみせて、彼らに涙まで流させたというウォルト・ディズニーの有名な逸話も思い出した。
このプログラムではコヴァリョフの"Hen, His Wife"も上映されて、改めてその物凄さを実感する。唖然としてしまった……疲れが最高潮だったのでコヴァリョフみて引き上げる。寝る。

・またしてもインタビュー
夕食後、山村さんがロシアで発行されている日本アニメの専門誌のインタビューを受ける。「日本のアニメについてどう思うか」というテーマで、山村さんは大苦戦。俺も通訳(というかアシスト)の役割を超えて、「"アニメ"を観る人のほとんどは山村さんの作品を好んで観ることはない。観客は分断されていて非常に不健康だ」という話をする。向こうの記者さんは、「ロシアでは今、日本のアニメがサブカルチャーとして非常に人気があり、そこからアニメーション総体へと関心が向かっていく人もたくさんいる」という話を。そう、確かにロシアの学生の話を聞いていると、商業的なアニメーションの話がノルシュテインなどのアニメーションの話と実に自然につながっていく。アニメーションをひとつの文化として捉えようとする見方が自然に育まれている。(ノルシュテインの本なんてその傾向の最たるものだろう。)ロシアのアニメーションがまだ力を持っている理由の一端はそこにあるはず。日本の観客も精神的鎖国から解放されてもうちょっと健康的な状況になればいいんだけども。

・カーニバル
カーニバルは仮装大会でした。今回のテーマは「食べ物」、ということで、船のなかにはいろいろな食べ物が出現している。上映会場では食べ物コスプレをしながらの出し物の発表会が開催。俺は後ろの方で一歩引いて観ていたけれども、8割方はスベってました。でも別に会場はあたたかな空気のままなので、それでいいんでしょう。参加することに意義がある。

チェルカスキーさんはスコットランド人的なスカート

ニンジンたちの夜がはじまる

わかりにくくて申し訳ないのですがノルさんが船長に

オリガは……なんなのこれ?

チョーマはブタに

ちょっと衝撃的だった裸おどり。一応パン。

ユーリャは自分をミンチに……

ジュースたち。頭にストロー刺してます

仮装準備のために風船がもぎとられ寂しい廊下

衣装替えしたチョーマはもう食べ物ではない

ビールが切れてしまったので買いにいったらチョーマたちに捕まって、あとは会場には戻らずバー前の踊り場で若者たちと共にたむろする。「危険だからやめとけ」と注意を受けつつも好奇心を抑えられずサマゴーンカ(自家製のお酒)を試してみたら意識が飛びました。だからあんまりよく覚えていないんですが、顔を青く塗られたこと、「俺はロシア語でしゃべりたいんだ!!」とわめきちらしていたらしいこと、実際に流暢にしゃべっていたこと(普段は本当にしゃべれないし聞き取れない)、などといろいろなことがあったというのを、自分のデジカメに収まっている写真や友達の証言によって後から知りました。あとトゥメリヤさんと一緒に島唄歌ったのも覚えてる。お酒は怖いです。

今日もみんな踊ってます

気づいたら青く塗られていました 7>


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