ロック国際アニメーション映画祭2008 レポート
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日目(2008.9.25)


・フェスティバルのハイライト、キジ島
昨日の暴飲のせいで朝から体調がめちゃくちゃ悪い。というか風邪を引きました。しかし船がキジ島に着き、視界の遠くの方になにやら荘厳な建物がそそりたっているのを目撃して目が覚めました。身体も覚めました。なんだか既視感がある、と思って記憶の糸を辿ったらドラクエ8でした。3Dのファンタジーの世界に迷い込んでしまったような感じ。ゲームにこの感覚を先取りされてしまっていたのは非常に悔しいし、そんな自分を残念に思います。

向こうの方になんかある

入島したとたんすごい景色が目の前に。光が……

キジは世界遺産の木造教会で有名です。釘を一本も使わずにこんな建物が建てられてしまいました。老朽化してきて修復が必要らしいのですが、どうすればいいかわからないそうです。まさに奇跡の建築。

今日も良い天気。

思わずエクスタシーの表情を浮かべてしまいました。

この建物から受けた感覚に近いものを記憶の糸をたぐって探してみました。ノルシュテインのアニメーションです。なんというか、すべてに根拠があるような。あらゆるものがあるべきところにあるような。釘使わないであんな大きな建物が立つってことは、それなりの根拠(現代にいくら知恵を働かせてもそれがなんなのかわからないとはいえ)があるってことで、思えば今そこに散らばっている落ち葉もそこになんとなく置かれたものなのではなくて、理由あってそこにある。そのすべてを理解できないとはいえ。(神とかそういう話をしているんじゃないですよ。木が育って、風が吹いて……とかそういう話です。)アニメーションが世界の創造だとして、やはりその世界もまた法則に貫かれているべきだと常々思う。作りたいものを作っている過程で、その世界が説得力あるものになるためには、「こんなふうに作りたい」だけではなく「こんなふうに作らざるを得ない」部分が必ず入ってくるはずだ……それを意識するかしないかって、結構大きな分かれ目なのでは? 今回の映画祭で(今回に限ったことではないけど)、大多数の3DCG作品や人形アニメーションに感じてしまうのは、あまりに無批判的に空間が創出されすぎだろ、ということ。俺ら3D空間に住んでるから作品も3Dでよくない?、みたいな軽さを感じる。根拠を欠いたゆるくて軽い3D空間は作品から緊張感を奪い、作家の単なる恣意によって作られた、スクリーンの反対側にいる人間にはまったく関係のない世界になると思う。この木造教会やノルシュテインのアニメーションには確実に未知の秩序があって、それゆえに人の目を惹き付けるのではないか……限りない探求を展開していきたいという好奇心がオンになるのではないか……はい妄想終わり。散歩しなきゃ!

いやあ、空の色が、なんだか嘘みたいな青さだよ。

この島の空気感だけは写真では絶対に伝わらないなあ。スケールがおかしいんですよ、あの教会群のせいで。島の大きさに比べて、やつら大きすぎる。でも不自然じゃない大きさ。ミニチュアのなかにいるような、しかも根拠あるミニチュアのなかにいるような。この教会が建てられることによって島の空間が住民にどう体験されるようになるのかまで計算に入れて建築されている感じがする。教会だけでなく島全体をも建築するような。

風車どーん

青から赤・黄が主調に

一ヶ月くらいここに住みたい! オスロさんが子犬のように走り回って写真を撮りまくっていたのが印象的でした。「ヘビがいるから原っぱには入るな」って言われるのに完全に無視。

そして黒と白に。

教会を体感したあとは、小高い丘を目指してひたすら歩く。自然に足が動く。



きれいですね〜

途中でヘビを発見。小さなヘビ。

写真を撮るヘビ好きの山村さん。

どこまでも続きそうな道なのだが。

時間が来たので帰らないといけない。

山村さんが「ロシアのこんなへんぴな島に来てるくせに日本では本州から出たことない」という衝撃的な発言をしていた。(俺も九州は行ったことないけど。)「アニメーションを作ることで世界中行けるようになるとは思ってもみなかった」とも。すいやせん、おこぼれをいただいてますっ!
船に戻る途中、アルダシンに呼び止められ、ビールをもらう。アサヒビールが売店で売っていたので買い占めて(二本だけど)くれていたらしい。良い人。ありがたくいただきます。しかしこんな島に日本のビールが売ってるなんて……(観光地としてかなり整備されているのでそこまで不思議ではないんですけどね。)

キジ島が名残惜しいので、デッキに出て今もらったばかりのビールを飲みながらもう一度島の空間に浸る。

メタリックなアサヒが眩しい!

名残惜しい。

出発後、次の上映まで時間があったので、良い天気のデッキを散策。

きもちいいなあ

チョーマとユーリャがいて、なんかよくわからない遊びをしていた。意味不明だけど楽しそうだった。

ユーリャが台の上で踊り

チョーマがそのまわりを回る。

船内では日に日に手作りポスターや手作り新聞が増えていきます。基本的に学園祭感覚なんですよね。

これ作ったのもトゥメリヤさんです。

これもたぶんそう。

これも。

・コンペ4(カテゴリー2)
相変わらず卒業制作部門。"Beton"(Ariel Belinco, Michael Faust)はようやくちゃんと観れた。良い質感を持った悪くない作品なんだけれども、なんだか軽い。物理的にというか精神的に。テーマはもちろん重いですよ。なんというか、アニメーション表現としての歴史の重みを感じないんです。別にそんな重みなくてもいいのかもしれませんけど。"About Socks and Love"(Michaela Copikova)は明らかにパルンが好きなのだと思う。ちゃんとした技術があればかなり良くなりそうなのに……ああ、惜しい。恋人に振り向かれない女性のさみしさ、世界からの疎外感を重くなりすぎずそれゆえにリアルに描き出すことに成功しかけている作品。モノの動きが人間の感情を拡張して表現するというか。『トライアングル』でいえば落ちる餃子みたいな。ああ惜しい。"The Traveller"(Johan Pollefoort)は結局今回グランプリを取った作品。ダンスの動きがすごく良くて、一瞬「あれ? 『My Heart is a Metronome』の人?」と思った。(業務連絡です。山村さん、あとでメモ帳を見返したら、この作品についてもきちんとメモってました。花丸つけてました。寝てませんでした。でも覚えてませんでした。悔しいです。ここで全編観れます。)"A Mouse's tale"(Benjamin Renner)は赤黒白のスタイリッシュな映像で展開されるネズミとライオンのお話。スマートな物語転換でよく出来てるなあ、と感心。このプログラム、申し訳ないことにあまりに疲れすぎて(そしてビール飲んだせいで)半分くらい寝てました。しかし"The Bellringer"(Dustin Rees)で起こされました。なんというか、スイスらしい作品、とか言ったら語弊があるか……かわいらしいデザインで、ちょっと残酷な展開のお話を、玉突き状にテンポ良く展開している。マーク・ベイカー(スイスじゃねえし)〜イザベル・ファヴェ直系という感じ。広島でもここでもコンペに入っている"Bottoobahtoh"(Marina Rosset、今回のフェスにも来てます)にも似た感触があるのでスイスっぽいと思ってしまったのかもしない。ここで全編みれます。

船がすごい揺れてる! 湖が本気だした! 「嵐がかすった」とか言っているし! 怖いよ! 慌ててベッドに潜り込む。隠れてもどうにもならないけど、せめて無抵抗であることを示そうと思って。少々の揺れもやっぱりちょっと怖いことがあって、上映中とかに少し揺れが激しくなると一瞬「地震か!?」って思ってしまうわけですよ。日本人の悲しい性。しばらくしたら揺れはおさまる。

・インタビュー三昧
ロシアのジャーナリストであり映画祭の企画などもしている女性のインタビューに同席するもまったく役立たず。急に喉がおかしくなって声が出なくなったりするし……完全に風邪を引いた。 夕食後、例の「カフカ原作のアニメーション」で論文を書こうとしているマグダレーナのインタビュー。この子とはもう何度もしゃべっているのでコミュニケーションがとりやすくインタビューもつつがなく終わる。「『田舎医者』は原作の一行がワンショットに対応するようにした」という話を聞いて彼女は本気でびびっていた。

マグダレーナの懸命なインタビュー

・オスロ回顧上映&ワークショップ
彼が天才であるのはわかるのだけれども、やはり抵抗しなくてはいけないなにかがある…… 上映は『アズールとアズマール』だったので山村さんとともにちょっと失礼する。"Lovesick"のスペラがやってきて、山村さんにサインをねだる。ノルシュテインと山村さんが彼女にとっての二大スターなのだという。良いセンスしてんじゃん!

・「リ・アニメーション・クラブ」
今日の「リ・アニメーション」はトーキングナイト。笑い話をみな順番に話していくというもので、完全にロシア人向け。ということで今日はパス。星を見て寝ることにする。
外に出ると星がありえないくらいに綺麗。まるでプラネタリウムにいるみたい……(ってそれ逆だよね。キジ島に続いて作り物に先を越されてしまって悲しい。まあそれくらい、東京生まれ東京育ちの人間にはありえないような体験をさせてもらっているということです。)自分が高さ100メートルくらいのドームのなかにいるように思えてくる。天の川まではっきりと見えて、美しくもあるが恐ろしくもある……

写真には当然写りません。 6>


クロック国際アニメーションフェスティバル2008 5日目 < 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >