ロック国際アニメーション映画祭2008 レポート
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日目(2008.9.24)


・朝食抜き
朝食の時間がいつもより一時間早いことに気づかず寝過ごす。上映には間に合ったがご飯抜き……

・コンペ2(カテゴリー2)
カテゴリー2は卒業制作。"Administrators"(Roman Klochkov)は融通の利かない役人に対する強烈な皮肉の作品。まあ、直接的に政治的であろうとするよりは、単にある種の定型をいじくって展開していくタイプの作品だが、とてもよく出来ている。『霧のなかのハリネズミ』のパロディーなんかがさらっと嫌みでなく入っていたりして、素直に笑えた。"Cafe"(Marta Mackova)はパヴラートヴァ『ことば、ことば、ことば』とパルンの間の子のような作品。細かく抑制の効いた動きが効果的で悪くない。"Procrastination"(Johnny Kelly)は「めんどくさいこと」を映像のメタファーで展開していくセンスのよい良作。あるあるネタでもなく、とんでもないシチュエーションが列挙されていくのだが、なんとなくわかる。

今日も良い天気。

・「マスターズ・スクール」
11時からはノルシュテインによるワークショップ付き上映。ノルシュテインの『草上の雪』二巻本とヒトルーク『私の職はアニメーター』二巻本出版記念。近年来日がご無沙汰だったので、久しぶりのノルシュテイントークにひたすら感激してしまう。今回の彼の話はヒトルークの偉大さに終始。プログラムにはノルシュテインをはじめとした何人かの大御所作家たちのベスト3作品が並んで載せられているのだが、ノルシュテインのチョイスは一位から三位まですべてヒトルークの『ボニファティウスの休暇」。ノルシュテインのヒトルーク評はといえば、ヒトルーク=「キング・オブ・リズム」なのだそう。『ボニファティウス』はアニメートのリズムだけでなく、編集、カメラワークもまた素晴らしく、『ヴィニー・プーフ』(ロシア版のクマのプーさん、シリーズ第一作は超名作だと思うんですけど、もしかしてまだ日本で紹介されてない?)はとぼけ具合の描写とリズム感に特筆すべきものがあるという。
ノルシュテイン

ノルシュテイン(裸足)

その二作品の上映を観て、その後にノルシュテイン作品(『アオサギと鶴』と『霧のなかのハリネズミ』)を続けて観ると、ヒトルークがノルシュテインに与えた影響の大きさがよくわかる。プーさんはそのまんまハリネズミですね。(ついでに、『アオサギと鶴』は『ミトン』などカチャーノフ作品の影響が強いのかなと今回の上映でちょっと思ったり。)
『霧のなかのハリネズミ』、作品内部で完結しつつ、その枠を超えて無限に世界が広がっていることをほのめかすその構成にノルシュテイン作品のひとつの真髄の一端を見た気がする。(というか、『キツネとウサギ』から『外套』まで全部そうですよね。良質なアニメーションは誰の作品でもだいたいそうなんですが。)
大著『草上の雪』については、人間の文化の一部としてアニメーションという事象を捉える試みであり、だからアニメーション以外の他の多くジャンルの作品を参照しているというコメント。本には非常に多くの(1700枚以上!)の図版がアニメーションに関係ある例として挙げられている。そのほとんどは絵画なのだが、ノルシュテインが言うには、必ずしもすべてが自分の好きな絵ではなく、アニメーションについて考えるのに重要であれば載せているという。(たとえばダリは数枚載っているが、嫌いらしい。)
ノルシュテインの後にはヒトルークのお孫さんも登場し(昨日の夜に話してた人だった。ロシア最大のアニメーションについての情報サイトhttp://www.animator.ru/の管理人)、『私の職はアニメーション作家』の難産ぶりを伝える。そうだよなあ、もうお孫さんがいても全然おかしくないよなあ。ノルシュテインも孫いるしなあ。歴史!

ヒトルークのお孫さん

・マンドロギー
今日の遠足はマンドロギー。あからさまに観光客向けスポットで、その開き直りが逆に楽しい場所。民族的な色がギラギラしている建物群。しかしロシア人のチョーマは「これをロシアの伝統だと思わないでくれ」、オリガは「キッチュの極み」とちょっと怒り気味。昼飯は外で。民族音楽系歌謡曲グループみたいな人たちの演奏を聴きつつ、朝食抜きだったのでがつがつと食べる。
キッチュ丸出し

屋外屋根付きバイキング

演奏後CD売り歩いてました。いわゆる「営業」か。

牧場があるらしい、ということでチョーマ、ユーリャ、ミハイル・アルダシン、アレクセイ・アレクセイエフ(その時は知らなかったけど)らと散歩。なんかアルダシンがユーリャと腕組んで歩いてるんだけど……ユーリャはロシア有数のアニメーションの学校「シャール」(ノルシュテインやナザーロフらが設立)に入学したばかりで、アルダシンはそこで先生をしているので、あらかじめ知り合い(そして明らかにアルダシンが気に入っている)らしいのだけど、日本だったら先生と生徒の関係であんなことしたら許されないだろうなあ。欧米の人はすぐにハグするしチークダンスで濃厚に接触して踊るし日本人と距離の感覚がだいぶ違う。そしてそれをどう理解すればいいか少し戸惑う。
みんな明らかに道を外れて、森のなかをショートカットしようとしている。道なき道を歩きながら、チョーマは日本のアニメの話をまたしても連発。ロシアの森のなかでこんな話をしていることを滑稽に感じる。その後は馬に会ったり幼稚園らしきところで子どもに会ったり。こういうところに住んでる人もいるんだよなあ。帰りはチョーマとノルシュテインについて激論を交わしつつ船へ戻る。広場でみんな昼寝していたりタコ揚げしていたり微笑ましい光景がたくさん。天気が良かったので最高に気持ちよかった。

森を突っ切る。靴がすごく汚れた。

馬に会ったよ

タコあげ

・コンペ3(カテゴリー2)
今回も卒業制作カテゴリー。山村さんが「知られざる」で書いていた"Lifeline"(Tomek Ducki)は、平行に走っていくいくつもの線路を走る歯車型人間の人生は絡み合ったりそうでなかったり。デザイン性とクオリティーがあまりに高くて逆にするりと通り抜けていってしまった。"Lovesick"は広島のときに書きましたよね。技術的に問題はあれど、学生作品で人形アニメーションだということを考えれば、やはりそんなに悪くない作品だと思う。作家と会った補正がかかっているかもしれないが。

寒くないときはデッキで過ごす人も多い。

・山村浩二回顧上映&ワークショップ
なぜ俺がここに来れたかといえば、山村さんのワークショップの通訳(日本語→英語)をすることになっているから。上映の最中は会場を抜けて山村さんと階下でだらだら過ごしながら緊張感を高めていく。日本にいるときに日本語原稿をもらっていてそれをあらかじめ英語に訳しておいたので、おそらく大きなミスはしないと思うだけれども……案の定、一時間ほど経ったところで熱で脳が溶け出していくのを感じはじめ、意識がフェードアウトしはじめる。しかしなんとか、大きな怪我をすることなく終わることができた。山村さんは「新世代のスター」と紹介されていた。ワークショップ後、何人も山村さんの元に駆け寄ってきて興奮気味に質問を浴びせる。なんだか嬉しい光景。

・「リ・アニメーション・クラブ」
とりあえず山村さんとビールで打ち上げをしつつ、リ・アニメーション・クラブに。今日は昨日と違ってまったくちゃんとしておらず、観客も少なくてグダグダ気味。みんな疲れが溜まりはじめてきたころなのかな。しかしトゥメリヤさんは今日も元気に歌っている。無尽蔵のエナジー。

トゥメリヤさんは今日も元気

今日は若者たちがYellow Submarineを歌う。

早めに寝ようと思ったがなんだか少し寂しいので、船のなかをぶらぶらとしていると、トゥメリヤさんと出くわす。マンドロギーで「日本で一緒に歌ったよ!」と話したりしていたので面識はあったのだが、「俺の部屋にウォッカを飲みにこないか」と誘われたのでホイホイ付いていく。ロシアで飲むウォッカはうまいんですよね。ストレートで酒をあおりつつ、日本で描いたというスケッチブックを見せてもらう。めちゃくちゃ絵がうまい、というか、スケッチどころじゃなくて商品みたいなしっかりした絵が描いてある。この人、いろいろとプロだなあ。音楽のセンスもめちゃくちゃある。「アニメーターのなかで一番のミュージシャンだし、ミュージシャンのなかで一番アニメーションがうまい」という巷での評判通りの人。

チェブラーシカbyトゥメリヤ

日本語の勉強のあとがうかがえる

スケッチの一枚のなかに、「島唄」の歌詞がローマ字で記してあった。日本で知った一番のお気に入りの曲だったらしい。「よし歌おう」と言われ、ウォッカで完全に解放されきった心にはそれすらもウォッカ同様に魅力的なオファーに思われ、とりあえず部屋のなかで大声で歌う(迷惑)。思った以上に盛り上がって俺としても気持ち良くて、「じゃあバーに戻って歌おう!」ということに。もうすでに数人しか残っていなかったし酒で視野も狭くなっていたので、思う存分高らかに歌うと超気持ちいい。喝采を浴びて、なかには真顔で「素晴らしい」と握手を求めてくる人も。いやあ、これはやめられませんな。ウクライナ・アニメーション界の大巨匠チェルカスキー(すでにすごくおじいちゃん)もわざわざ寄ってきてくれて「良かったよ」と握手してくれた。ロシア式の歌(同じメロディーにあわせて、歌いたい人が即興で歌詞を乗っけて歌っていく)を聴きながら、誘われるがままにウォッカを重ねて飲み、次第に意識が朦朧としてくる。その後の記憶に残っていることはクリスティーナに「もう飲むのはやめなさい」と怒られたこととチョーマに抱えられて部屋に戻されたこと、その途中でスペラと会い特に何もしてないのに大笑いされたこと。 5 >


クロック国際アニメーションフェスティバル2008 4日目 < 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >