ロック国際アニメーション映画祭2008 レポート
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日目(2008.9.23)


・ほんとに船に乗ってんだ!
朝、目を覚ますと、周りに見えるものはすべて水だった。うわあ……しばらくはヨーロッパ最大の湖であるラドガ湖を行くのである。ちなみに、大きな客船なので揺れはそれほどでなく、心配していた船酔いは大丈夫そう。

湖です

・ヴァラーム島
10時前にヴァラーム島に到着。修道院で有名な場所。しかし観光客に開放されているのは島のごく一部のみで、本物の修道士が生活している区域は立ち入り禁止。教会なども新しく建て直されたものが多く、現在も工事が進行中。そんなわけで観光客用の区域を約三時間のハイキング・タイムというような感じに。遠足はガイドの使用言語の都合上、ロシア人グループと外国人グループに分かれる。今のところほとんどロシア人としか知り合っていないので結構さみしい。
自然のなかを歩いているとなんだか長野を散策しているような錯覚に襲われ、わさび蕎麦が食べたくなる。日本食のことを思い出すのは危険なことであった。しばらく禁断症状に苦しむ。(船の中の食事はおいしいんですけどね。)ハイキングコースは結構アップダウンが激しく、無駄に荷物が多かった俺は途中から苦しくなる。



教会群


自然のなかをとことん歩く

崖こわい

・友達が増える
船に帰って特に行く場所もなくうろうろとしていると、初日に山村さんに紹介してもらった"Lovesick"のスペラさんに話しかけられたので、いろいろと話す。今は人形劇団で人形制作の仕事をしつつ、新しい作品の構想を練ったり撮影機材を買うために貯金したりしているらしい。どこの国も若手アニメーション作家をめぐる状況は変わりませんな。そのうちに彼女のルームメイトがやってきて、その子とも話す。ポーランド出身で今はイギリスの院に在籍しているマグダレーナ・オシンスカさん。修了制作とあわせて論文も書かなければいけないらしく、しかもそのテーマが「カフカ原作のアニメーションについて」。ポーランドでの指導教官がピョートル・ドゥマーラで、現在の指導教官がキャロライン・リーフ。カフカ原作アニメーションの巨匠たちに師事しており、二人からインタビューをとる予定なのだという。そしてこのフェスティバルに来てみたら審査員に山村さんがいる(直前まで審査員が分からないシステムなのがクロック)。是非ともインタビューさせてくれないか、と頼まれ、若い女の子の頼みを断れるわけがないので「いいですよ」と勝手に快諾。重い荷物のなかに入っていた一枚の軽い紙、俺のASIFAマガジンの原稿(『田舎医者』についてのレビュー)のコピーをあげた。

かもめ並走

・ごはんの友
昼飯にも山村さんの姿は見えず、朝食以外はずっと上で食べるようだ。昼飯夜飯はテーブル固定制になっており、専門の給仕も付く。俺のテーブル(6人がけ)には、チョーマ、モスクワでギャラリーを経営しているおじいさん、優しそうな二人のロシア人のおばさん、そして映画祭スタッフのウクライナ人セルゲイ。セルゲイは日本語に非常に興味を持っており、食事のたびにいろいろと質問をしてくる。自国の文化・習慣について説明するのはすごく難しい。自分にとっては当たり前すぎて。隣のテーブルに固定されていたマグダレーナに「あなたの文章とても面白かったわ」と言われて嬉しくなるが会話をどう続けていいかわからず笑顔を返すだけにしておいた。笑顔は万国共通の言語。

・コンペティションプログラム1など
クロックがアニメーション・フェスティバルだということをほとんど忘れかけていたころ、ようやく上映プログラム開始。コンペプログラム1。カテゴリー1は大学在籍時に制作された作品が対象。環境は町内会の夏祭り上映レベル。船の最上階のスペースにパイプ椅子が並べられているだけという簡素なかたち。上映機材もいたって普通で、EIZONEのブースで使っていたものの方が立派だった気がする……部屋の中には当然傾斜などないので、二列目以降は前の人の頭が邪魔になってスクリーンの下部が見えない。うーん……ホールの後部で椅子を重ねて高い席を作ってみたり、椅子の前のスペースで寝転がったり、各自それぞれのやり方でよりよい上映環境を見つけていく。俺は最初のうちは客席のなるべく前の方の椅子に座っていたが、パイプ椅子の間の間隔が狭いため、隣の人たちと太ももが密着して熱が伝わってきて眠くなってくるし、隣が女性だとドキドキしたりして上映に集中できないので二回目の上映以降は後ろの方の空いているスペースに陣取り、スクリーンの下部は諦めることにした。
広島のコンペに入っていた"Weiss"を再見したがやっぱり面白くなかった(後日アップ予定の広島座談会参照のこと)。空間はあらかじめそこにあるから、やっぱり意外性もなにもないんだよ。対照的に"Hello Antenna"はアニメーションのリズムが良くて楽しめた。しかし上映環境のせいなのか作品自体の質のせいなのか、全体的にあまり楽しめない。初見のものでは、広島のパノラマに入っていたが見逃した"Yarn... Good Light is Essential"(Reka Gacs)はなかなかよかった。内容と語り方の一致。"Katerinka Imagine"はピクシレーションとドローイング・アニメーションを混ぜまぜしたなかなかの力作で好感。ただ習作のレベルからは出ていないので、なんとも。

エミール・コール『ファンタスマゴリー』100年記念フランス・ヤング・アニメーター特集はひどすぎたので省略。

・品評会
夕食後、「マスター・マインディング」。プレス・コンファレンスだと伝え聞いていたのだが、実際にはその日上映された学生作品の品評会。作家が自作について説明したあと、担当者(この日はイワン・マクシーモフ)がその作品についてかなり辛辣にコメントする。それに対して作家が反論したり、会場から感想やら質問やらが飛び交ったり、なかなか真剣な雰囲気。面白かったのだが、かなり疲れてきていたので途中で退室。

夕食後、なんだか外が神秘的な雰囲気に。

・「リ・アニメーション・クラブ」
23時からバーで「リ・アニメーション・クラブ」。みなが芸事を披露していくイベントらしい。今日のテーマは歌。ロシアのアニメーション関係者たちはみんな芸達者でびっくりする。マクシーモフがギターをかきならしつつ自分の娘たちと歌を歌う。ミハイル・トゥメリヤ(彼の音楽の才能はものすごい)、アルダシン、ノルシュテインがバラライカを弾きつつ歌う。セリョージャが弾く「ソナタ」に感動。「もしなにかやれと言われたらどうしよう」などと不安になって山村さんに相談していると、チョーマが太鼓を持ってやってきて、「『となりのトトロ』の「さんぽ」を一緒に歌おう」とか言い出す。それはちょっと恥ずかしいかな……?! 「今日はやめておこう」ととりあえず逃げる。

イワン・マクシーモフと彼のふたりの娘さん
毎晩大活躍のミハイル・トゥメリヤとそのバラライカ
ノルシュテイン、アルダシン、トゥメリヤの歌と演奏

・宴会、これがこれが本当のクロックか!
「リ・アニメーション」終了後、廊下に出てチョーマたちとビールを飲む。泥酔した彼のルームメイトが寄ってきて絡まれる。日本に来たことがあるらしく、「テヅカサマ、テヅカサマ」と連呼したり「今俺は世界中の国々の創世の神話をアニメーションのオムニバスにする企画を考えているからお前は日本を担当しろ」と強制されたりする。ごめん、俺アニメーション作ってないんだよね。 そうこうしているうちにバーがディスコ会場になっている。みんな踊りまくり。アニメーターたち体力ありすぎでしょう。一緒に楽しまなきゃ損だと思い、俺も踊るがすぐに疲れてしまいダウン。すると送迎をしてくれたクリスティーナがやってきたのでしばらく話す。若いと思ったけど17歳だった。酒のんじゃだめでしょ。いろいろな人に薦められるがままにウォッカなど飲まされているうちにどんどん気持ちよくなってくる。ディーマというロシア人女子がやってきて「あなた誰?」と単刀直入に質問される。「日本人です」くらいしか答えてないけど、なんだか納得したらしく去っていった。今回の映画祭、日本どころかアジア圏からの参加者が山村さんと俺だけなのでいろいろと目立っているらしい。ディスコではチークダンスが始まり、さすがにこれはついていけない。つーか初対面でなんでそこまで密着できるの? 

・船が持ち上がる
三時ごろ、クリスティーナに誘われて、ラドガ湖から隣のオネガ湖に船が移動する様子を見にいく。両方の水位が違うので(オネガ湖の方が高水位)、小さな運河に入って水門を閉め、リフトで船を持ち上げて、少しずつオネガ湖側の水門を開けていく。これだけの大きな船が自分たちと一緒に持ち上がっていくさまは圧巻だしなんか興奮した! そして暗闇の中にふたたび突入していく! ひととおり興奮したら寒くなってきたので(この時にはTシャツ一枚しか着てなかった)、クリスティーナとさよならしてこの日は寝た。楽しい一日だったなあ。4 >


クロック国際アニメーションフェスティバル3日目 2008 < 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >