ロック国際アニメーション映画祭2008 レポート
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 海外のアニメーション映画祭に参加するのはこれが初めてなのですが、こんなにユニークなフェスティバルってなかなかないんじゃないでしょうか。クロック国際アニメーションフェスティバル。そのレポートを届けします。
 今回で15回を数えるこの映画祭は一年ごとにウクライナとロシアと交互に場所を移して毎年開催されています。コンペティションは一般作品と学生作品がこちらもまた交互に対象となり、今回はロシアで学生映画祭。
 この映画祭の一番の特徴は、なんといっても、船の上で開催されること。今年の場合、開会式と閉会式は街中の映画館で一般の観客を交えて催されましたが、それ以外のパートはすべて船の上(もしくは寄港先の遠足)。9月22日の深夜にサンクトペテルブルクを出て、29日にモスクワ着。つまりその期間のあいだ、一般のお客さんが上映を観ることはなく、出品者や僕のような正体不明の謎の人間まで含め、フェスティバル関係者だけが観客となります。これ以上ないくらいに閉じた映画祭であるとも言えます。
 今年の閉会式、映画祭の様子を編集したドキュメンタリー・ビデオが流れました。何人かの主要ゲストが、「クロックとはなにか」という質問に答えるパートがあったのですが、そこでイワン・マクシーモフが言っていました。「クロックで一番楽しいのは、夕食後から翌日の朝食までだ。」つまりパーティーや飲み会のことを言っているんですから、映画祭であること全否定です。でも確かにそういう映画祭なんですよね。
 というわけなので、クロックのレポートを書くにあたって、広島のときのような作品オンリーの語りはしません。この映画祭の雰囲気をお伝えするためには、主観的な視点で丸ごとレポートしてしまった方がいいだろうと思います。結果的に、作品については添え物の程度の分量になってしまいましたし、かなり個人的な、人に読ませるようなものになっていないようなものになってしまったかもしれませんが、とりあえずどうぞ。(土居伸彰

日目(2008.9.20)


・空港到着
夜の九時、ほぼ定刻通りにサンクトペテルブルク着。二回目のロシア。飛行機から降りると非常に寒い。体感的には日本の一月くらいの寒さ。日本ではTシャツ一枚で過ごせていたのに、半日で劇的な変化。送迎がいなかったらどうしようという恐れを抱きつつ(一回目のロシア訪問の際、飛行機の到着が遅れて頼んでおいた送迎が帰ってしまっていて夜中12時に暗いモスクワの空港に放り出され途方に暮れた経験があるので)、早足に送迎デッキへと駆け込むと、若い女の子がクロック国際映画祭の看板を持って立っていたので一安心。荷物も無事受け取って、早々に車に乗り込み、ホテルへ向かう。飛行機の都合で一日早くついてしまったので、まだ船には乗れないんです。「この時期の週末はホテルがなかなかとれないので、すごく安いホテルになってしまうけど勘弁してほしい」というようなことを言われ、一応覚悟しておく。「ベッドがあればどこでもいいですよ」と余裕の発言を微笑みながら。「5年前にロシア語を勉強しにこの街にちょっといたんですよ」とロシア語で言おうと思いながらも、なかなかきっかけが掴めず言えないまま終わる。

・サンクトの安宿
ホテルに到着。というか雑居ビルの二階。確かに安そうな宿。部屋に入ると五つもベッドがある。「ベッドがあれば」とは言ったけど、ちょっとサービス過剰かな? そして送迎の女の子が衝撃の発言。「申し訳ないけど、暖房が壊れてるの」。先ほども言いましたように、日本でいえば1月くらいの体感気温ですからね。「ベッドさえがあれば」としか言ってないから、仕方ないんですかね。我慢しないとだめですかね。「部屋はあなた一人しか泊まらないし、掛け布団たくさん使っていいからね?」とロシア人女子の優しさ。でも掛け布団が見当たらないんですね。日本人の僕には枕カバーにしか見えない薄い布を、ロシア人女子は他のベッドからしこたま集めて俺のベッドに敷いてくれました。「明日は12時にママと迎えにくるから、それまで待ってて。それじゃあおやすみなさい」と去っていきつつ、「あ、私はクリスティーナ。あなたは?」ときかれたので「ノブアキです」と言うとすごく怪訝な顔で「え?」と返される。日本人の名前は、慣れてない人にとっては聞き取るのが非常に難しいらしい。仕方ないので「ノブでいいです」となんだかちょっと恥ずかしい呼び名を名乗ってしまった。

ベッドが5つある部屋。60ドルしました。ひとつあたり12ドルなので確かに安いですね。5人で泊まるならね。(ちなみに、映画祭中の宿泊費・食費は無料です。びっくりですよね。)

トランクから防寒具をしこたま出す。お腹がすいたし喉が渇いたのでなにかをちょっと買いにいこうかと思ったけれども、外が異様に騒がしい。複数の若者たちの声とバイクの音。「フォー!」とか「アーオ!」とか獣のような声。フロントに行っておばちゃんに、「ここどこですか」と質問しようと部屋から出ようと思ったら鍵があかない! がちゃがちゃやっていたらフロントのおばちゃんがやってきて「何してるの!」と怒られる。「ドアが開かないんです」とロシア語で返すと(発音がおぼつかなかったので、おそらくおばちゃんの耳には「ドアがあかないよ〜」と幼児的な言葉遣いに聞こえていたことでしょう)、「あらあなたロシア語しゃべれるのね!」と嬉しそうな声を出して「鍵をドアの下から渡して」とアドバイス。それに従い鍵をドア下に滑らせおばちゃんにパス。しかしおばちゃんが試してもドアが開かない……相当ガンガンガチャガチャやりつつ、3分くらいしてようやく開く。「コツあるんですか」と質問したら、「わからない」と真顔で応答される。「ここはどこですか」となんだか頭の悪い質問をするとおばちゃんが指した地図上の場所はセンナヤ広場近辺。ドストエフスキーの『罪と罰』で主人公のラスコーリニコフが地面に口づけをする(一部の人にとっては)有名な場所。そして現在では治安の悪さで有名な場所。出かけるの止めました。チキンなんで。成田空港で買っておいた都こんぶを食べて餓えをしのぐ。しかし都こんぶは口中の水分を奪い気持ち悪い。水を飲みたいがやっぱりドアが開かないしおばちゃんももう寝てしまったのか出てきてくれない……あきらめて早々に寝ることにする。しかし本当に寒い……枕カバーみたいな毛布ではどうにもならず、持ってきた服をしこたま自分にかぶせてなんとか寝ようとする。疲れていたのですぐ眠れたが、寒くて夜中に目が覚める……せめてシーツの下に潜ろうと思い、シーツをエイとまくってみると、衝撃の展開。敷き布団だと思っていたものは掛け布団だった……そして枕カバーみたいなシーツと思っていた布は実際に枕カバーだった……(言い訳させてもらうと、ロシアは通常、室内は暖房が効いて(効きすぎて)いるものなので、布団が薄くても不思議はないと思ってしまったのです。)二枚ほど掛け布団をひったくって暖かく眠りましたよそのあとは。 1 >


クロック国際アニメーションフェスティバル0日目 2008 < 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 >