CAF 2007
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 ICAF二日目です。

○Les e-magiciens 2006 優秀作品集
午前中はLes e-magiciens 2006の優秀作品上映。CG制作が盛んになってからというもの、工場(機械)と人間(有機物)という対立を描く作品が多くなってきた気がします。今回のICAFでもいくつか。"Bob"(Jean-Pierre Poirel)はそれをスタイリッシュに仕上げた作品。番号で管理される従業員。13013という番号がなにかのはずみでくっついてB0Bになる。すると自分の意識を取り戻す……という反ユートピア小説にありそうな設定があくまでオシャレに。他の人の番号はうまく名前になるわけではないので混乱が起きる。自由になったとしても所詮数字がアルファベットに変わったにすぎないのです。
 "Once Upon a Time"(Corentin Laplatte, Jerome Dernoncourt, Samuel Deroubaix)はジョン・フォード『駅馬車』の映像を使いながら展開するCGアニメーション。ヴァージル・ヴィドリッチの脅威の作品"Fast Film"の時にも思ったけれども、こういうのって著作権は問題にならないのでしょうか?
 "The Adventures of John and John"(William Bishop-Stephens)はローファイ感漂う雑種アニメーション。僕はこういうの好きです。ビデオ的なぬるぬるとした画質がしっかりマッチしている。パペットアニメーション部分はあまりにローファイすぎないかと思ったが脳内探検のパートはすごく力が抜けていてよい。このプログラムはあからさまにファンタジー色が強く無批判的に3Dな作品が多く辟易していたので2Dの魅力を活かしたこういう作品もあってほしい。おすすめです。RCA卒業作品。さすがです。

○Cプログラム(京都精華大学・東京造形大学)
 "REMtv"(金子幸樹)もまたいい感じで力の抜けた、自分の見た夢をテーマにした小品集。宇宙規模・世界規模のスケールと日常のまぬけさのスケールが混濁するバランス感。鼻につくような感じがまったくなく、べちゃっとしていて良い。
 "東京オリンピック"(大槻知浩)は単なるパロディーに収まらない怪作。方法論としてのジャパニメーションをきちんとやれる学生作品はなかなか少ないのでは。個人的にはまったく好みでないけれども、ここまできちんとやっていれば降参です。この疾走感。
 "いくえみの残像"(横田将士)は本日一番の当たり。実写の写真を使ったアニメーション。猫への愛の視線。誰もいない部屋に、なんでもない日常の光景を映した写真が積み重ねられていき、いつしかネコのオブジェができあがる。どっぷりアニメーションに漬かっていない人だからこそできる作品で風通しもよい。この作品もまたビデオのぬるぬるの質感が気持ちいい。
 "光"(山田桃子)は丁寧なドローイング作品。光は触れるし飲める。正しい。だが、なにかちょっと惜しい。突き抜けるなにかがほしい。
 "聞耳『第二幕・鏡』"(中田彩郁)はこれまでの作品の丁寧さ・良い子さからの脱却のマグマが感じ取れる作品。過剰さへ一歩踏み出している。後半の平手打ちシーンの連続に震える。テーマのわりにはモノと人間との交感の感触が足りない気もするが、完成すればそれも解消されるでしょう。解消されればよりエモーショナルになるはず。
 "蒲公英の姉"(坂元友介)は、"電信柱のお母さん"をみた身にとってすれば、「なぜ人形?」と思ってしまいます。僕はあまりパペットアニメーションの見方がまだよくわからないのですが、一つ言えることがあるとすれば、人形アニメーションにはオブジェを優しく見つめる視線が必要なのではないでしょうか。たとえば"The Adventures of John and John"の冒頭、オブジェをただ映しているだけなのに、心の中に何か温かいものが生まれてきます。しかしこの作品だと変な距離感があって道具としてしか使っていない印象がします。写真や図版など細かい作業をやっているのは偉いのですが、それよりも必要なのはモノとしての強度なのではないでしょうか。美術が全体的にアンバランスですが、計算された歪みであるという印象は受けず。力のある人だと思うのでこちらの目も自然と厳しくなってしまうということを差し引いても……

○Dプログラム(大阪芸術大学・広島市立大学)
 "花とロボット"(監督:宮口友里)は彼岸アニメーション。ここではない、どこでもない、そこだけで完結した世界で出来事が起こっている印象です。まるであの世のような。音楽もアナログチックな雑音を立てて寂しいメロディーを流しつづけます。おそらく本人たちの意図とは異なるところで暴力的。技術的拙さが美しさに転化する、おそらく偶然の産物。
 "あそべのこ"(本田礼子)は生成アニメーション。個人的な好みとして、この分野であるだけで評価が甘くなってしまう。生成アニメーションがすばらしいのは、動きの質の部分が必然的に重要になってくるところです。マクラレンの言う「いかに」の重要性。観念だけをかたちにして、それがいかに変容するかに気をつかわないこと作品が多いなかで、こういうやり方は貴重です。
 "Up to Maestro"(西川剛弘)は海外の短篇みたいでした。こういう作品を作る日本の学生がいるとは思いませんでした。"カタツムリンピック"(古山俊輔)はバカバカしくて良いけれども音が割れているし早口なのでよくわからず。会場の音環境がよくないというのもあるが、作り手の方でも音に気をつかっていないのでは、と少し思いました。
 "Dream in the Dream"(杉殿育恵)は普通にオシャレで出来の良い切り絵アニメーション……だと思ったら後半にどんでん返しでゾッとしました。淡々と描いているからこそ逆に怖い。全然無害だと思っていた動物が突如として牙を剥いてきた感じでした。
 "The goat's mail"(矢立恭)は互いの手紙を食べてしまうヤギさんという誰もが知っているあの歌をモチーフにして、独自のエンディングを加えたもの。原作の歌が持っているあの永遠の反復感を増す展開となっていて、少しぞっとしてしまう。これもまた直線的な時間の消滅した彼岸の世界のアニメーションですね。
 "迷走赤ずきん"(pecoraped)は"Dream in the Dream"の作者込みの二人ユニット。これもまた出来の良い作品だが、赤ずきんの格好がスッと変わったり他の物語が流入してきたり、あらゆるものが過剰に降り注いできたり、一度みただけでは掴みきれない。ラストはパラレルワールドに次から次へと飛んでいく。どこまで狙ってやっているのだろう?作品から溢れ出す天真爛漫さがその判断を迷わせます。これ全部計算づくなんでしょうか? もしそうならかなりすごいと思うし女性ってこわいなとも思う。"TOMSON"は丁寧に作られたパペット・アニメーション。キモかわいい感じ?小ネタが丁寧。

 学生作品はあらゆる範囲に広がっているので面白いといえば面白いけれども疲れるといえば疲れる。みなさんさまざまな想像力をお持ちなのですね。(土居伸彰>3
 

関連サイト
ICAF公式ホームページ
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